文章の校正とは?記事の品質を高める方法と意識するポイント
校正とは、文章の誤字脱字や文法の誤りを修正し、正確で読みやすい文章に仕上げる作業です。WEBコンテンツや雑誌記事など、あらゆるメディアにおいて校正は非常に重要です。ライターが書いた原稿を公開前に確認し、品質を担保するためのプロセスです。
校正と似た言葉には校閲、推敲、添削がありますが、それぞれ意味が異なります。校正は文章の正確性を追求し、誤りを修正することに焦点を当てています。これに対して、校閲は内容の正確性や事実確認、推敲は文章の構成や表現を改善する作業、添削は他人が書いた文章を修正することを指します。
校正とは
校正とは、文章を確認し、誤字脱字や送り仮名、文法などの誤りを正すことです。WEBコンテンツや雑誌記事などではライターが記事を書きますが、ライターが書いたものを公開してよいのかどうかを確認する作業と言い換えることもできます。似た言葉に校閲、推敲、添削などがありますが、意味が異なります。世の中に出す前に行うべき作業としては校正は必須ですが、校閲、推敲、添削は必ずしも必須ではありません。
文章校正を行うことで、より品質が高く文章として読みやすくなります。コンテンツの質を担保するという点でも重要ですが、ユーザーのためによりよい文章にするということを意識して行うことが重要です。
校閲との違い
校閲とは、原稿を読んで内容の誤りを正したり、不足している内容を補足することです。校正は文章として正しいかどうかを確認するという点に主眼を置いていますが、校閲は固有名詞(人名、地名、企業名)、歴史的事実、数値や年代などに誤りがないかを確認することです。
そのため、校正は文章の編集者であれば対応できますが、校閲は分野ごとの専門家でない場合には対応できないことが多く、書籍や文献を参考にして正しい内容を発信する努力をすることが求められます。
なお、校正が終わったことを校了といいますが、広い意味で校閲の完了のことを校了ということもありますが、本来の使い方とは異なります。
推敲との違い
推敲(すいこう)とは、文章の構成や表現を、より良いものへ練り直していく作業のことです。そのため、誤りを修正する校正や校閲とは異なり、マイナスをなくす作業ではなくプラスを増やす作業といえます。
推敲の場合には文章の美しさや 表現の豊かさが求められるため、校正ができる編集者が推敲までできるとは限りません。
添削との違い
添削とは、他人の文章を確認し、修正することです。校正との違いは、誰が文章を書いたのかという点です。他人が書いた文章を添削することはありますが、自分が書いた文章を添削することはありません。
文章校正の範囲
文章を校正する場合、どこまでを行うのかはニーズによって異なりますが、内容が論理的かつ一貫性があるかどうかを確認することが一般的です。主張内容として問題がない場合にはコピーライティングまで確認することもありますが、基本的には執筆者の意図がありますので、校正では世の中に出しても問題ないかどうかという観点で判断します。
その意味では、校正の範囲は次のようになります。
- 文章の論理性
- 正確性
- スタイルと一貫性
- 言語と文法
- 単語の選択
- 技巧的な正確性
- 書式
端的にいえば、メディアルールに則った書き方ができているのか、ですます調なのかである調なのかで統一されているかのような文章としておかしくなっていないかどうかという点で文章をチェックする必要があります。
校正の重要性
優秀な執筆者が十分に推敲を重ねても誤りは出てくるのが一般的です。そのため、記事制作にはライター以外にも編集者を何人か置くことが普通ですが、これはそれだけ校正の重要度を表しています。
記事の内容を誤解なく、正確に伝えるには誤字や脱字があってはいけません。誤りが多い記事が多数あれば、それだけでサイトの信頼性まで失われてしまう可能性があります。そのため、可能な限り客観視して文章を読み、誤りを解消することが求められます。
また、一度校正して公開した文章であっても、WEBサイトであれば更新も容易であるため、パッチワーク的な改修を繰り返すことでいつの間にか文章がおかしくなっているということもありえます。
校正の方法
校正はメディアルールに沿って修正することが主な方法ですが、メディアルールが多くなるとすべてを覚えておくのは難しくなります。完璧を目指すことも重要ですが、次のような観点でチェックを行い、致命的な問題を除外するという方針で実行するようにしてください。
時間を置いてから行う
自分の文章を校正する場合には必ず時間が経ってから確認するようにしてください。文章が頭に残っているうちに確認しても間違いに気づきにくいことが多いのですが、真っ新な状態で確認すると誤りに気づいたり、さらに良い表現が思いつくことがあります。また、夜に書き上げたものを朝に確認すると新たな発見があることも多く、時間を置いて確認することは校正では必須です。
表記を統一する
記事の中はもちろん、WEBサイトの中や雑誌の中のように1つのメディア内での表記ルールを統一する必要があります。同じ書き方であっても漢字で書くものと平仮名で書くものでは感じ方が変わってくるため、ライティング前にメディアルールを定めたほうがエラーが少なくすみます。
表記の統一ルールはさまざまな手法がありますが、NHKのような大手メディアの表記に合わせる、記者ハンドブックに合わせる、自社でルールを作るなどの検討が必要です。
代表的なところでは、次のようなルールや表記ゆれを統一することになります。
- ですます調 / だである調
- 数値表現:半角か全角か、桁数が多い場合の区切りはどうするか
- エレベータ / エレベーター:外来語の表記
- 五輪 / オリンピック:オリンピックのような使用制限があるキーワードの言い換え
- WEB / Web / web / ウェブ:同じ言葉の言い換え
- 行う / 行なう / おこなう:漢字を開くか閉じるか、送り仮名はどうするか
- 売り上げ / 売上:名詞と動詞での使い分けをどうするか
- スマホ / スマートフォン:略せる言葉を略語にするかどうか
※編集業界では、漢字で書くことを閉じる、平仮名で書くことを開くと表現します。
数字や固有名詞の確認
年代、日付、単位、固有名詞のような表現には特に注意が必要です。2024年か2025年かの打ち間違いは重大な誤解を招く可能性があったり、徳川家康と徳川家光なのかの打ち間違いで誤った知識を相手に与えてしまう可能性があったりします。
現在ではインターネット検索で新しい知識を入れることは日常的に行われています。そのため、通常の誤字脱字と比較しても数値や固有名詞の間違いは重大な誤認につながります。紙媒体の編集に慣れている編集者はこの点を非常によく理解して校正してくれますが、編集者経験が浅い場合やWEBメディアの経験しかない編集者の場合はチェックが甘くなることがありますので注意が必要です。
誤字脱字がある前提で読む
校正者は誤字や脱字があるかどうかを確認することが仕事です。そのため、誤字脱字があるかどうか確認するという姿勢ではなく、必ず誤字脱字があるのでどこにあるのかという観点で確認する必要があります。
印刷して確認する
文章はWordやGoogleドキュメントでの提出が多いものの、校正者はときには印刷して記事を確認する必要が出てきます。紙で確認することで全体を俯瞰してみることができたり、確認しながら書き込めるという点でミスが少なくなることがあります。特にイラストや画像の説明文が入っている場合、文章が縦と横で混在している場合などは画面上での確認よりも紙での確認のほうがミスが少なくなります。
文章を音読してみる
目で追って文章を読んでいると、思わず見落としてしまうことであっても声に出して1文字1文字を確認していくとミスに気付くことがあります。また、声に出して読むことで文章のリズムがいいかどうかを確認することもできます。句読点が多すぎる場合も少なすぎる場合も文章を理解することが難しくなることがあるため、文章のリズムをチェックするという意味でも声に出すことは有効な手法です。
二重チェックする
文章に限らず第三者のチェックを入れることで精度が上がります。事前情報がある人が文章をチェックするよりも、第三者が文章を読むほうが見落としや誤りに気づくケースも多く、有効な手段です。文章として正しいかどうかという視点も重要ですが、読んでいてわかりづらい箇所があるかどうかという点でも二重チェックは必要です。
言い回しをチェックする
慣用句や熟語を間違った意味で使ってしまうことは非常に多く、誤った表現の結果、執筆者の意図と違う意味で伝わってしまうことがあります。また、執筆者の表現が正しくても世間一般的に誤った意味で伝わってしまった結果、文章は正しいのに誤読されてしまうという可能性もあります。
編集者の役割を考えれば、正しい日本語を使うということも重要ですが、相手にわかりやすく伝えるという観点での校正が必要です。
代表的なところでは、次のような表現に注意が必要です。
- 煮詰まる:十分に議論された様子。議論に行き詰っているという意味は誤り
- 割愛する:惜しみながら外すこと。不要なものを省略するという意味は誤り
- 役不足:実力に対して仕事が軽すぎること。力不足とは反対の意味
- 的を射る:的を得るは誤った表現。正鵠を得るであれば同じ意味として正しい
同音異義語をチェックする
同音異義語は入力の際の誤変換で起こりやすいものですが、そもそもの認識が誤っていることで間違ってしまうこともあります。特に保証 / 保障 / 補償や納める / 収める / 治める / 修めるのように意味が混合しやすいものがありますので注意が必要です。
校正のために文法を意識する
現代の日本語は難しいものが多く、文章を書く際に文法を意識する必要があるものの、ライターであっても文法を意識して書くことは少なくなっているのが実情です。また、日本語は言葉が生きている状況が続いているため、言葉の意味や使い方が変わってきているケースもあります。何が正しいのか判断することが難しいことが多くはありますが、例文を参考にすることで編集者の身体に刷り込んでいく必要があります。
例えば、次の表現はいずれも修正したほうが良い表現として挙げられます。ただし、現在では正しいとされているものや文法的には意見が割れていても実際に使用されているケースは多々あります。そのため、何が正しいかという視点と同時に、どう書けば伝わりやすいかを考えた校正が重要です。
誤った表現 | 正しい表現 |
現在は主婦をしています | 現在は主婦です |
彼は事実を知らなさそうだ | 彼は事実を知らなそうだ |
この景色は美しかったです | この景色は美しいと思いました |
ぜんぜん良いです | とても良いです |
政府の批判を挙げてください | 政府への批判を挙げてください |
歌ったり、踊って楽しみました | 歌ったり、踊ったりして楽しみました |
私は、好きな果物はりんごです | 私の好きな果物はりんごです |
参考:間違い言葉の事典(PHP文庫、1996年、日本語表現研究会)
いずれも実際に見たことがある文章であり、現在でもWEBコンテンツで見られることがある表現です。どこまでを許容するかの判断はメディアに委ねられますが、細かいところにまで拘ることできれいな文章になることは間違いありません。
サ変動詞+するの表現
日常会話では名詞に「する」を付けることで同紙にすることがありますが、すべての名詞が動詞になるわけではありません。
助動詞そうだの使い方
「そうだ」は助動詞で、「よい」や「ない」に続くときには「さ」を入れて「よさそうだ」や「なさそうだ」と表現します。しかし、「知らない」のように「ない」が付く場合には「さ」を入れてはいけません。
形容詞+ですの表現
「形容詞+です」の表現は言語に簡素な形の敬語として認識されるようになりましたが、過去形が関わった場合には形容詞を過去形にして「です」を付けるのか、形容詞はそのままにして「でした」にするのかで表現が変わります。
例文でいえば、「美しかったです」なのか「美しいでした」なのかということになりますが、文法的に「美しいでした」は正しくても現代の日本人が使うことはまずありえない表現です。「美しかったです」は口頭では使われますが、文章として認められるようになったかは微妙なところです。
否定形が続く副詞
副詞のなかには「ぜんぜん / まるっきり / 決して / ろくに」のように否定の意味だけが来るものがあります。近年では「ぜんぜん良い」のように「非常に」という意味で使われることもありますが、文法的には破格といい、正しいものではありません。
助詞の使い方
「てにをは」などの助詞は名刺の後に使い、主語や目的語を確定させるためや文節同士の関係を示す役割を果たします。使い方を誤ると意味が変わることがあります。
例文の「政府の批判を挙げてください」では、「政府が批判していること」を挙げてくださいという意味になってしまい、「政府に対する批判」という意味には伝わらないことがあります。
たりの使い方
接続助詞たりは並列を表すときに使います。例示的に複数を挙げる場合には、項目のすべてに「たり」を付ける必要があります。
例文の「歌ったり、踊って」は文法としては誤りであり、現代でも非常に多くのメディアで誤って使われている表現です。本来は「歌ったり、踊ったり」とする必要があります。
主語の重複
文章には必ず主語と述語が存在します。しかし、主語が複数存在したり、主語と述語が一致しなかったりする誤りはかなりの頻度で見かけます。どちらも一読すれば違和感を感じるはずですが、ライターでも編集者でも見逃すことがありますので注意して確認する必要があります。
文章校正チェックツールと利用時の注意点
文章校正には時間がかかります。ときには何万文字にもなる文章をチェックする必要があるとなると時短や効率化のためにチェックツールを使うというのもわかります。しかし、文章校正ツールは万能ではありません。また、ツールでの指摘事項が自社ルールと合っているかも別問題です。
あくまで一般論としての正しさや表記ゆれを短時間で見つけることができるという点で利用することは問題ありませんが、チェックツールを使ったから問題ないという判断は誤りです。また、校正という観点ではツールでできる場合であっても校閲にはならないことがほとんどです。
最終的には目視確認をするという前提で、作業効率化を上げるために利用するという軸での利用を心掛けてください。なお、文章ルールさえ定まっているのであれば、エクセル関数を組み合わせることで比較的簡単に作成することができるため、有料ツールを使うことが良いとは限りません。ここではよく使われる校正ツールを例示しますが、本当に必要なのかどうかはメディアごとに判断してください。
まとめ