SGEがAI Overviewへ名称変更!何が変わった?
2024年5月、Google社は、SGEとして提供していた生成AI検索機能について、正式名称をAI Overviewにすることを発表。これにあわせて、アメリカでは、AI Overviewが一般公開されました。その他の地域に関しては、順次公開する予定としています。
Googleが新たに発表した、AI Overviewについて解説します。AI Overviewの基本情報のほか、検索エンジンに導入されたのちに、SEO対策にどのような影響を与えるのかという仮説を紹介していきます。
検索エンジンのAI機能について
2023年に開催したGoogle I/Oにて、SGE(Search Generative Experience)と呼ばれるAI検索サービスが発表されています。そして、これまでは、SGEをSearch Labs上で試験運用してきました。
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そもそも、SGEとは、検索結果の上部にクエリの質問に対する回答文章を表示する検索エンジンの機能のことです。AIがGoogle検索エンジンにインデックスされたWEBページから情報を収集して、ユーザーの検索意図を推察して、テキストを構築する仕組みとなっています。
SGEの正式名称がAI Overviewに決定
Google社は、2024年5月14日(現地時間)に開催したGoogle I/O 2024にて、生成AIを検索エンジンに組み込んだ新たな技術のAI Overviewを発表しました。
引用:Youtube
関連記事:Google I/O 2024でGeminiアプデなど発表 AI技術を応用したSEO対策を解説
また同日には、アメリカでAI Overviewが一般公開され、他の地域でも順次サービスが開始される旨が告知されました。
AI Overviews will begin rolling out to everyone today in the US, with more countries coming soon. They provide both a quick overview of a topic and links to learn more. We’ve found that with AI Overviews, people use Search more, and are more satisfied with their results.…
— Google SearchLiaison (@searchliaison) May 14, 2024
2024年6月20日現在では、日本国内でAI Overviewの一般公開は開始されていません。ただし、XのGoogle公式アカウントのポストを見る限り、近日中には世界中で一般公開されるようです。
2024年6月現在ではSearch Labsで利用可能に
以前よりSearch LabsでSGEを試せましたが、2024年6月20日現在では、AI Overviewの試験運用版に触れることができます。日本の検索エンジンにAI Overviewが導入されるまでは、このテスト環境を利用してください。
ツールURL(外部):Search Labs
SGEとAI Overviewでは、なにが違うのか
SGEとAI Overviewの最大の違いは、導入されているAIが異なる点です。もともと、SGEのAIには、大規模言語モデル(LLM)のPaLM 2が採用されていました。しかし、AI Overviewでは、LLMのGeminiが用いられることが明らかになっています。
また、Google検索責任者のリズ・リード氏は、AI Overviewの機能を紹介するブログを公開しています。それによると、AI Overviewの正式発表とあわせて、SGEから名称変更されたほか、新たな機能を追加する旨を述べています。たとえば、次の2つの機能をアメリカのSearch Labsに対して、近日中に導入する予定としています。
- モード変更の機能
- 多段階推定の機能
参考(外部):Generative AI in Search: Let Google do the searching for youのGoogle翻訳
モード変更の機能とは
ここでいうモード変更の機能とは、AI Overviewとして表示されたAIによる概要の表示方法を変更するモードのことです。モードは、次の3種が用意されるとのことです。
モード | 解説 |
---|---|
Original(標準) | 検索クエリに対する標準的な説明文章を表示するモード。SGEで採用されていた仕様と同様のもの。 |
Simple(簡略) | 標準的な説明文章を短く要約して表示するモード。 |
Break it down(詳細) | 標準的な説明文章より詳細な情報を表示するモード。 |
モード変更の機能を追加した理由として、リズ・リード氏は次のように語っています。
これは、トピックに不慣れな場合や、お子様の好奇心を満たすために何かを簡略化しようとしている場合に特に役立ちます。
引用:Generative AI in Search: Let Google do the searching for youのGoogle翻訳
検索ユーザーによって、クエリに対して持つ知識が異なることから、すべての検索ユーザーの満足度を高めるためにモード変更の機能を用意したことが伺えます。
多段階推定の機能とは
多段階推定(Multi-step Reasoning)の機能とは、複雑な問題の答えを出すために、複数の要素を組み合わせて解決を目指す機能のことです。この機能は、Geminiに導入されているもので、AI Overviewに切り替わるタイミングで実現可能となりました。
この機能により、長文のような複雑な検索クエリに対しても、適切なAIによる概要を表示するようになります。
リズ・リード氏のブログでは、長文で複雑な質問にAI Overviewが回答しているようすの事例を紹介しています。事例の文面は、次のとおりです。
「ボストンで最高のヨガやピラティスのスタジオを見つけて、入会特典の詳細とビーコン ヒルからの徒歩時間を表示してください」
引用:Generative AI in Search: Let Google do the searching for youのGoogle翻訳
この質問に対して、下記画像のように、AI Overviewが答えてくれるようになるとのことです。
引用:Generative AI in Search: Let Google do the searching for you
AI Overviewの一般公開後に、SEO対策がどのように変化するのか
AI Overviewが導入されることで、一般的には、下記のような変化が起きると推測されます。
- ゼロクリック検索が増加する
- AEO対策のニーズが高まる
- オリジナルコンテンツの重要性が高まる
さらに、アメリカのデジタルマーケティング専門サイトのSearch Engine Landに目をとおしてみると、AI Overviewの導入後は下記点の変化もありえることがわかります。
- アクセス解析方法が変化する
- 全体的にオーガニック検索のトラフィックが減少する
ゼロクリック検索が増加する
クエリ(質問)の答えとなる説明文章が検索結果の上部に表示されると、AIによる概要の部分を読んで満足する検索ユーザーが現れる可能性が高まります。そのため、ゼロクリック検索の増加が懸念されます。
AEO対策のニーズが高まる
検索結果のAIによる概要には、情報元のリンクが設置されます。WEBサイトの運用者としては、AIによる概要に自社サイトのページを表示するために、AEO(Answer Engine Optimization)対策をする必要があります。AIによる概要内のリンクのCTR(クリック率)が高くなると仮定すると、AEO対策が重要視されることになります。
オリジナルコンテンツの重要性が高まる
自社サイトならではのオリジナルコンテンツを多数有していると、AEO対策に直結しますので、AIによる概要に採用される確率が上昇します。そのため、WEBサイトの運用者としては、オリジナルコンテンツを作成する作業の重要性が増します。
アクセス解析方法が変化する
AI Overviewが導入されると、アクセス解析の方法が変化します。
先行してAI Overviewが導入されたアメリカでは、Google Search Console(サーチコンソール)でAIによる概要の部分のパフォーマンス情報を確認できるようになっています。つまり、Googleサーチコンソールのデータの読み取り方が変化するということです。一方、Googleアナリティクスにおいても、AIによる概要の部分からどの程度アクセスされたかを推測することも可能です。
全体的にオーガニック検索のトラフィックが減少する
アメリカのデジタルマーケティング専門サイトのSearch Engine Landでは、「AI Overviewsの導入がクリック数やトラフィックに与える影響」をテーマとした記事を公開しています。
そこでは、独自の考えをもとに、オーガニック検索のCTRが低くなる可能性があると警鐘を鳴らしています。この仮説は、下記の2つの要因から導かれているようです。
- ゼロクリック検索の増加懸念
- AIによる概要のCTRが高まる
後者に関しては、リズ・リード氏がブログで下記のように語っていることを仮説のソースとしています。
AI 概要に含まれるリンクは、そのクエリに対して従来のウェブ リストとしてページが表示された場合よりも多くのクリックを獲得しています。
引用:Generative AI in Search: Let Google do the searching for youのGoogle翻訳
どうやら、検索結果上で目立つ存在となるAIによる概要は、オーガニック検索などと検索ユーザーを奪い合う存在になると懸念しているようです。つまり、現状で検索結果の上位表示を確保していて大きなトラフィックをえている場合、AI Overviewsの導入後に影響を受ける可能性があるということです。
AI Overviewのよくある質問
AI Overviewに関する、よくある質問をFAQ形式で紹介しています。
Q:AI Overviewとは?
Answer)AI Overviewとは、検索結果にクエリの説明文章を掲載する、Google検索エンジンのAI機能のことです。アメリカの検索エンジンには、2024年5月14日(現地時間)に導入され、その他の地域には、順次対応しています。
Q:AI Overviewは、日本語でどのように訳されますか?
Answer)日本語版のSearch Labsでは、「AIによる概要」と表記されています。ただし、AI Overviewは、サービス名ですので固有名詞にあたります。サービス提供者である、Google社は、本サービスの日本語訳を明確に公表していません。
Q:AI Overviewには、どのようなAIが使われていますか?
Answer)AI Overviewには、大規模言語モデル(LLM)のGeminiが採用されています。Geminiは、多段階推定と呼ばれる機能が備わっていますので、長文で複雑なクエリに対しても、適切に回答できるなどの強みを持ちます。
Q:AEO対策とSEO対策の違いは?
Answer)SEO対策を広義的な意味として捉えるか、狭義的に捉えるかで話が変わってきます。
まず、SEO対策を広義的な意味で捉える場合、AEO対策は、SEO対策の一環という位置づけになります。
SEO対策を競技として捉える場合、AEO対策とSEO対策の違いは、対策の対象が異なる点が挙げられます。ここでいうAEO対策は、AI Overviewで表示されるAIによる概要に自社ページのリンクを掲載することが目的となります。一方、SEO対策は、主に、オーガニック検索(検索順位)で上位表示することを目的とします。
Q:AI Overviewの導入後は、検索トラフィックが減りますか?
Answer)さまざまな仮説が飛び交っています。ただし、AI Overviewがアメリカの検索サイトに導入されてから日が浅いため、現状では、まだ不明です。これから自社サイトで検証する、またはWEB業界の動向を追うことが大切です。
まとめ