日本新聞協会が検索生成AIの著作権侵害に関する声明を発表!高まるAEO対策の必要性
日本新聞協会は、検索連動型の生成AIが報道コンテンツなどを情報源として、似た回答を表示する仕組みに対して、著作権侵害に該当する可能性が高い旨を主張する声明文を2024年7月17日に出しました。
参考(外部):生成AIにおける報道コンテンツの無断利用等に関する声明
日本新聞協会は、知的財産権が軽視されている風潮があるとしています。その原因として、急速に進化した生成AIに対する法整備が追いついていないことを挙げています。こうしたことから、政府に対して、著作権を守るために法整備を進めるよう求めました。
一方、この出来事は、これまでは近未来のデジタルマーケティングとして注目されていた、AEO(Answer Engine Optimization)対策が本格的に求められる時代に突入した可能性を示唆しています。
検索連動型の生成AIでゼロクリックサーチが増加
検索連動型の生成AIといえば、Google検索エンジンと連動する、SGE(Search Generative Experience)の正式名称をAI Overview(オーバービュー)とする旨が発表されたことで話題を呼びました。このほか、Bingと連動する、Microsoft Copilot(コパイロット)のリリースも記憶に新しいところです。
その一方で、検索連動型の生成AIの登場によって、ゼロクリックサーチが加速するのではと、WEB業界では囁かれています。ゼロクリックサーチは、検索結果上の画面でユーザーが満足して記事リンクをクリックせずに離脱する現象なのですが、WEBサイトの運用者としてはアクセスの減少につながります。
WEBサイトの運営活動は、WEB広告やコンバージョンの収益で賄われますので、ゼロクリックサーチが増加すると、ある意味では死活問題として捉えられるケースがあります。
検索連動の生成AIは著作権侵害に該当する可能性が高い?
日本新聞協会は、検索連動型の生成AIが著作権を侵害する可能性が高いと声明を出しました。
参考(外部):生成AIにおける報道コンテンツの無断利用等に関する声明
それによると、検索連動型の生成AIは、ニュースメディアが配信するコンテンツを無断で使用しているとのことです。さらに、情報源と同じような回答テキストが多々みられるほか、誤った情報が表示されることもあり問題が多いとしています。このような状況を生みだした背景として、法整備が進んでいないことを指摘しています。
日本新聞協会の主張は、主に下記の3点です。
- 問題1:独占禁止法に抵触する可能性がある
- 問題2:応答内容に事実と異なる情報が多い
- 問題3:法が著作権を保護できていない
こうした問題点を踏まえて、日本政府に対して、知的財産諸法の見直しを求めています。
問題1:独占禁止法に抵触する可能性がある
日本新聞協会は、検索連動型の生成AIが独占禁止法に抵触する可能性があると主張しています。
同協会は、これまでに検索連動型の生成AIを提供する事業者(主に、Google社やMicrosoft社)に対して、応答エンジン上における解説テキストを自動生成するうえで、ニュースメディアを情報源に利用するときは、権利者に許諾を取るように求めてきたといいます。
しかし、許諾がないままニュースメディアの記事が加工や転載されている状況を指して、市場の公正競争を保てなくなると見解を示しています。
問題2:事実と異なる情報がユーザーに誤解を与える可能性がある
応答エンジン上に表示される解説テキストについて、事実と異なる情報や本来の意味が歪曲された情報が多々あることを日本新聞協会が指摘しています。
前提として、ニュースメディアでは、記事のチェック体制を厳重に敷いているとしています。しかし、生成AIの性質上、複数メディアの情報を自動的に組み合わせたテキストを表示することから、情報としての信頼性が低いといいます。
この状況は、検索ユーザーに対して誤解を与えるとともに、情報源として無断利用されたニュースメディアの信頼性を損ねることにつながりかねないと危惧しています。
問題3:法が著作権を保護できていない
日本新聞協会は、生成AI技術の急速な進化に対して、法整備が追いついていないことを問題視しています。
検索連動型の生成AIは、ニュースメディアのコンテンツを無断で利用し、なおかつ、ゼロクリックサーチの浸透が進みかねないリザルト画面を表示していると指摘しています。ゼロクリックサーチが加速すると、ニュースメディアに対するアクセスが減少し、ひいては収益性が損なわれることになるといいます。
結果として、国内の文化が衰退することにつながると、同協会の考えを示しています。こうしたことから、日本政府に対して、著作権や知的財産を守るために法整備を進めるよう訴えています。
本声明文に対する反応
日本新聞協会が出した、検索連動型の生成AIに関する声明文に対して、2024年7月21日現在では大きな動きはみられません。日本政府としての見解もとくに発表されていません。
ただし、2023年ごろから、日本政府では、AI戦略会議の開催を皮切りに、生成AIと著作権に関するガイドラインを発表するなどの動きをみせています。今後、本声明を受けて、検索連動型の生成AIに対する考え方を示す可能性があります。
SNS上では、賛否両論の意見が交わされているようです。なかには、これまでメディアは、検索エンジンを利用してアクセスや利益を伸ばしてきたことに触れるなど、一部では厳しい意見もみられました。
本格的にAEOが求められる時代に突入か
SEO対策の観点では、AEO(Answer Engine Optimization)の施策を取り入れる局面に突入したと、本ニュースから読み取れます。なぜならば、日本新聞協会の声明文は、Google社のAI OverviewやMicrosoft社のCopilotをはじめとした、検索連動型の生成AIが存在感を危惧するものだからです。
同協会の指摘どおり、検索連動型の生成AIは、ゼロクリックサーチの浸透が加速する可能性があります。そして、オーガニック検索で表示されるニュース記事の検索流入数に少なからず影響を与えると推測できます。結果として、ニュースメディアの広告収入、有料記事の購読収入が減少し、報道活動に支障をきたすことになります。これが、同協会が主張していることです。
こうしたことから、WEBサイトの運用者としては、ゼロクリックサーチの増加が警戒すべきポイントであることがわかります。そこで、AEOを取り入れて、検索連動型の生成AIの仕様を逆手にとり、自社ページのアクセスに結び付けるべきです。
生成AIが表示するテキストに、自社ページのリンクを表示されやすくなる
事実として、検索連動型の生成AIが表示する、検索クエリに対する解説テキストは、リザルト画面の上部に掲載されますので、非常に目立つコンテンツです。
AI Overviewを例に挙げると、検索後のファーストビューがAIによる生成テキストで埋め尽くされます。そのため、多くの検索ユーザーが、このテキストを読むことになると容易に推測できます。
一方で、生成AIが表示するテキストには、生成時に利用した情報源に対するリンクが表示されます。自社サイトにAEOを取り入れることで、この目立つコンテンツに自社ページのリンクを掲載できるということです。
明確な答えを持つ検索クエリはゼロクリックサーチになりがち
ゼロクリックサーチされやすい検索クエリの特徴として、質問に対する明確な答えがあるケースが挙げられます。たとえば、下記のような一般的な知識に対する質問です。
- 明日の天気予報は?
- Google本社の住所はどこ?
- 1光年の速度は?
- 新型iPhoneの発売日はいつ?
- 日本の総理大臣は誰?
これらは、Knowクエリと呼ばれるもののうち、明確な答えを持つ情報です。このことを踏まえると、検索連動型の生成AIが導入されたとき、100〜200字程度の解説で答えをえられるKnowクエリでは、ゼロクリックサーチが増える可能性が高くなると推測されます。たとえば、次のようなクエリです。
- 概要の解説を求めるクエリ
- 既成事実の情報を求めるクエリ(ニュース速報など)
ゼロクリックサーチされにくい検索クエリでAEO対策の効果を期待できる
検索連動型の生成AIの影響を受けにくいと推測される検索クエリがあります。こうしたクエリでは、AEO対策で流入効果を期待できます。たとえば、下記のクエリがあります。
- 指名検索
- Buyクエリ
- Doクエリ
指名検索では、特定の企業や商品、人物の情報が求められています。指名検索の特徴として、検索ユーザーの熱量が高い傾向にありますので、AIが生成したテキストで満足しない可能性があります。さらにいうと、サイト名自体が指名検索された場合、「サイトに訪問すること」自体が検索意図になりますので、応答エンジンの影響をほぼ受けません。
Buyクエリ(購入)やDoクエリ(したい)も同様です。BuyクエリではECサイトに、Doクエリではコンテンツやツールにアクセスすることが検索意図の達成に不可欠です。そのため、ゼロクリックサーチされることがほぼないクエリです。
このほか、次のようなクエリでは、生成AIが用意する100〜200字程度の解説文では答えを提示しきれません。検索ユーザーがクエリ内容を理解するためには、長文テキストを読む必要があるので、ゼロクリックサーチになりにくいクエリとなっています。
- How to系のクエリ
- 具体的すぎるロングテールキーワード
- インタビューや調査、推察情報を求めるクエリ
まとめ